新潟県魚沼市。
冬になれば深い雪に包まれる、日本有数の豪雪地帯に蔵を構えるのが「玉川酒造」です。
創業は1673年。江戸時代から350年以上にわたり、この土地で酒造りを続けてきました。
代表銘柄は「玉風味」。
長い歴史を受け継ぐ老舗でありながら、玉川酒造の酒造りには、昔ながらという言葉だけでは表せない面白さがあります。
魚沼の雪を利用した「雪中貯蔵」、個性的な日本酒への挑戦、そして新しい商品づくり。
「伝統とは守るだけのものではなく、自分たちで創っていくもの」。
そんな考え方で、魚沼だからこそ生まれる酒を追求しています。
1673年創業。魚沼で350年以上続く酒造り
玉川酒造の酒造りが始まったのは、江戸時代前期の1673年。
初代・目黒五郎助から数え、現在まで19代にわたって酒造りを受け継いできた老舗です。
350年以上という長い歴史を持ちながら、玉川酒造が目指しているのは、単に昔の酒を再現し続けることではありません。
時代が変われば、食生活も日本酒の楽しみ方も変わります。
受け継ぐべき技術や考え方を大切にしながら、自分たちにしか造れない酒を生み出す。
その積み重ねによって、玉川酒造の歴史は現在まで続いています。
豪雪地帯だから生まれた「雪中貯蔵」
玉川酒造を語るうえで欠かせないのが、魚沼の雪です。
蔵のある地域では、冬になると周囲に4~5メートルもの雪が積もることがあります。
今では酒造りの大きな魅力となっている雪中貯蔵ですが、その始まりは意外な出来事でした。
かつて大雪によって、瓶詰めした日本酒が雪の中に埋まってしまったことがありました。
取り出すことができず、そのままひと冬を越した酒。
春になって雪の中から掘り出して飲んでみると、酒は驚くほどまろやかに熟成していました。
「この雪を、酒造りに生かせるのではないか」。
そこから玉川酒造の雪による熟成研究が始まります。
厳しい自然環境を弱点として捉えるのではなく、この土地にしかない個性へ変える。
現在の玉川酒造を象徴する酒造りのひとつです。
万年雪の貯蔵庫「ゆきくら」
玉川酒造では、万年雪を利用した雪中貯蔵庫を「ゆきくら」と呼んでいます。
庫内はおよそ2℃、湿度約90%という環境。
電気による冷却設備とは異なり、雪の中には機械による振動がありません。
玉川酒造では、ここで日本酒を瓶のまま貯蔵します。
静かな雪の中で、酒をゆっくりと休ませる。
その姿は、まるで日本酒が冬眠しているようです。
一般的な熟成酒では、時間とともに色や香りが変化していくことがあります。
一方、雪の中で眠らせた酒は、新酒らしい若々しさを残しながら、味わいの角が取れ、やわらかな風味へと変化していきます。
魚沼の雪があるからこそできる、玉川酒造ならではの熟成です。
雪国の厳しさを、酒の魅力へ
雪国で暮らす人にとって、大雪は決して美しいだけのものではありません。
毎日の雪かきや交通への影響など、生活を大きく左右する厳しい自然でもあります。
玉川酒造は、その雪を酒造りの力へ変えてきました。
最新の冷却設備を使えば、温度を一定に管理することはできます。
しかし、自然の雪がつくる静かで安定した環境には、機械とは違った良さがあります。
その土地にあるものを生かし、その土地でしか造れない酒にする。
「魚沼で酒を造る意味」を感じられる取り組みです。
代表銘柄「玉風味」に込められた思い
玉川酒造を代表する銘柄が「玉風味」です。
名前の「玉」には、丸く穏やかな味わいだけでなく、人とのつながりへの思いも込められています。
玉を描けば円。
円は「縁」にもつながります。
人が集まる食卓の真ん中に酒があり、そこで生まれる縁をつないでいく。
特別な日だけに飲む酒ではなく、人と人が食事を楽しむ時間に自然と寄り添う酒。
「玉風味」は、そんな存在を目指して造られてきた玉川酒造の代表銘柄です。
老舗だからこそ、新しい酒に挑戦する
350年以上の歴史を持つ玉川酒造ですが、商品を見ると「老舗」というイメージからは意外に感じる酒にも出会います。
そのひとつが「イットキー」。
名前は英語の「It’s the key」に由来し、「新しい日本酒の世界を広げるカギになってほしい」という思いから誕生しました。
軽快な飲み口に甘さと酸味を感じる、アルコール度数12度の純米吟醸。
和食だけでなく、ステーキやピザ、ハンバーガーといった洋食との組み合わせも提案されています。
「日本酒だから和食」という固定観念にとらわれず、もっと自由に楽しんでもらう。
長い歴史を持つ酒蔵だからこそ、日本酒の次の可能性にも挑戦しています。
個性的でも「変わっているだけ」では終わらせない
玉川酒造には、一般的な日本酒とは少し違った個性を持つ商品もあります。
しかし、単に珍しいものを造ればいいとは考えていません。
大切にしているのは、その商品が一時的な流行で終わるのではなく、長く飲み続けてもらえる酒になること。
新しい酒を生み出すときにも、100年先まで残る可能性を考える。
老舗だから昔ながらのものだけを守るのではなく、未来の人たちが「伝統」と呼ぶものを今つくる。
その考え方が、玉川酒造の商品づくりを支えています。
「伝統とは創るもの」
1673年から続いてきた玉川酒造。
350年以上の歴史を考えると、変わらないことが大切なように思えるかもしれません。
しかし、長く続くためには、時代に合わせて新しいものを生み出すことも必要です。
雪中貯蔵も、最初から何百年も続く伝統だったわけではありません。
偶然雪に埋まった酒のおいしさに気づき、研究を重ねたことで、今では玉川酒造を代表する酒造りのひとつになりました。
現在の挑戦も、長く続けばいつか伝統になる。
「伝統とは創るもの」。
玉川酒造の酒造りには、350年以上続いてきた蔵だからこその説得力を感じます。
玉川酒造を代表する日本酒
玉川酒造には、魚沼の風土と蔵の個性を感じられるさまざまな酒があります。
代表銘柄「魚沼玉風味」は、日々の食卓で楽しみたい定番酒。
人が集まる場所の中心で愛される酒でありたいという思いが込められています。
「雪中貯蔵 大吟醸原酒 越後ゆきくら」は、魚沼市産の山田錦を使用し、万年雪を利用した「ゆきくら」で出荷直前まで貯蔵される一本。
そして「純米吟醸 イットキー」は、甘さと酸味を生かし、日本酒の新しい楽しみ方を提案しています。
昔ながらの酒から、新しい感覚の日本酒まで。
幅広い商品を通して、自分好みの玉川酒造を探す楽しさがあります。
魚沼の雪とともに醸す、玉川酒造
350年以上受け継がれてきた酒造り。
蔵を取り囲む深い雪。
雪の中で静かに眠る日本酒。
そして、誰にも真似できない酒を目指して続ける新しい挑戦。
玉川酒造には、魚沼という土地の厳しい自然を受け入れ、それを自分たちの強みへ変えてきた歴史があります。
長い歴史がありながら、新しい。
個性的でありながら、長く愛される酒を目指す。
そんな玉川酒造の日本酒を味わうときには、その一杯を育てた魚沼の深い雪にも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


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