新潟県妙高市。
雄大な妙高山を望み、豊かな雪と清らかな水に恵まれたこの地で、江戸時代から酒造りを続けているのが「君の井酒造」です。
創業は1842年(天保13年)。
北國街道の宿場町として栄えた新井宿で酒造りを始め、180年以上にわたって日本酒を醸し続けてきました。
君の井酒造を語るうえで欠かせないのが、長年受け継がれてきた「山廃仕込み」。
手間と時間を惜しまず、蔵に息づく天然の乳酸菌を育みながら、豊かな旨味ときれいな飲み口をあわせ持つ酒を追求しています。
1842年創業。妙高で受け継がれてきた酒造り
君の井酒造があるのは、かつて北國街道の宿場町として栄えた新井宿。
蔵に残されている醸造許可証によると、創業は江戸時代後期の1842年(天保13年)とされています。
長い歴史の中では、明治時代の大火をはじめとする度重なる火災にも見舞われました。
それでも酒造りの火を絶やすことなく、妙高の地で技術を受け継いできました。
歴史を守るだけではなく、より良い酒を造るために新しい設備や技術も取り入れる。
伝統と革新の両方を大切にしてきたことが、君の井酒造の大きな特徴です。
君の井酒造を象徴する「山廃仕込み」
君の井酒造の酒造りを象徴するものが、伝統的な「山廃仕込み」です。
山廃仕込みとは、日本酒のもととなる酒母を育てる伝統的な方法のひとつ。
君の井酒造では、市販の乳酸菌を加えるのではなく、蔵に息づいている天然の乳酸菌を育みながら、時間をかけて酒母を造ります。
速醸酛と比べると手間も時間も必要になりますが、君の井酒造は山廃造りの技術を長年にわたり磨き続けてきました。
目指しているのは、力強さだけを前面に出した山廃ではありません。
豊かな旨味がありながら、きれいさも感じられる「エレガントな山廃」。
飲み飽きしにくく、料理とともにじっくり楽しめる酒へと仕上げています。
今も使い続ける「木製の暖気樽」
君の井酒造の山廃造りでは、現在では珍しくなった木製の「暖気樽(だきだる)」が実際に使われています。
暖気樽に熱湯を入れて酒母の中に入れ、山廃酒母の温度を細かく調整します。
木製の道具を使うのは、単に昔ながらの製法を守るためではありません。
木は熱の伝わり方が穏やかで、酒母に急激な温度変化を与えにくいという利点があります。
昔の道具だから残しているのではなく、おいしい酒を造るために必要だから使い続ける。
ここにも、君の井酒造が伝統を大切にする理由が表れています。
妙高の水と米を生かした酒造り
君の井酒造の酒を支えているのは、蔵の技術だけではありません。
酒造りに使用する仕込水は、妙高山麓を源とする矢代川の伏流水を、敷地内の井戸から汲み上げています。
さらに原料米についても、地元・妙高市産の米を積極的に使用。
雪国・妙高に降り積もった雪は、やがて豊かな雪解け水となり、田んぼを潤し、酒造りを支える水へとつながっていきます。
米、水、気候、そして人。
妙高の自然から得られる恵みを酒造りに生かし、この土地だからこそ生まれる味わいを追求しています。
伝統を守りながら、新しい技術も取り入れる
君の井酒造の興味深いところは、「伝統的な酒蔵」という言葉だけでは語りきれない点にあります。
山廃仕込みや木製の暖気樽といった昔ながらの技術を大切にする一方で、酒質を高めるための新しい技術も積極的に取り入れてきました。
その象徴のひとつが、ホーロータンクです。
現在では日本酒造りで広く使われていますが、その普及期には君の井酒造を含む新潟の酒蔵が導入を支えました。
「昔から続いているから守る」のではなく、おいしい酒を造るために必要なものは残し、より良い方法があれば取り入れる。
その積み重ねが、現在の君の井につながっています。
「その旨味の為に惜しみなく手を掛けること」
君の井酒造が大切にしている言葉があります。
「その旨味の為に惜しみなく手を掛けること」。
手間と時間のかかる山廃仕込みを続けていることも、木製の暖気樽を使い続けていることも、その根底にあるのは「より良い酒を造りたい」という思いです。
伝統をそのまま残すのではなく、時代に合わせて技術を磨きながら、君の井ならではの旨味を追求する。
180年以上続く歴史と妙高の自然、そして蔵人たちの技術が重なって、「君の井」の一杯が生まれています。
君の井を味わう
君の井酒造を代表する一本が「君の井 山廃純米吟醸」です。
蔵付きの乳酸菌を育みながら醸す山廃仕込みによって、豊かな旨味ときれいさをあわせ持った味わいに仕上げられています。
山廃という言葉から力強い酒を想像する方にも、君の井が目指す「エレガントな山廃」を一度味わっていただきたい一本です。
料理とともに杯を重ねながら、じっくりと楽しむ。
そんな日本酒の魅力を改めて感じさせてくれる酒蔵です。
妙高の雪、水、米、そして180年以上受け継がれてきた酒造りの技。
「君の井」を飲むときには、一杯の向こうにある妙高の風土にも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


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