新潟県のほぼ中央に位置する加茂市。
三方を山に囲まれたこの町は、歴史ある町並みや自然が残り、「越後の小京都」とも呼ばれています。
この加茂の地で、200年以上にわたり酒造りを続けているのが「雪椿酒造」です。
代表銘柄は「越乃雪椿」。
雪国の厳しい冬を耐え、雪解けとともに鮮やかな花を咲かせる「ユキツバキ」の名を冠した日本酒です。
雪椿酒造の大きな特徴は、仕込む酒のすべてを純米酒とする「全量純米蔵」であること。
米と水を大切にしながら、効率だけを追い求めず、人の手と感覚を生かした丁寧な酒造りを続けています。
1806年創業。加茂で200年以上続く酒造り
雪椿酒造の歴史は、1806年に「丸若酒造」として創業したことから始まります。
その後、1987年に主要銘柄である「越乃雪椿」にちなみ、現在の「雪椿酒造」へと社名を変更しました。
酒蔵のある加茂市には、ユキツバキの自然群生地として知られる加茂山があります。
雪深い冬を越え、雪解けを待って深紅の花を咲かせるユキツバキ。
その力強く鮮やかな姿が、「越乃雪椿」という酒名にも重なります。
新潟で「全量純米」という道を選ぶ
雪椿酒造を語るうえで欠かせないのが、「全量純米蔵」という特徴です。
2011年、雪椿酒造は仕込む酒のすべてを純米酒とする道を選びました。
純米酒の原料は、米・米麹・水。
原料となる米の特徴や酒造りの技術が、酒の個性として表れやすい世界です。
「新潟の酒」といえば淡麗辛口というイメージが広く定着するなか、雪椿酒造は純米酒だからこそ表現できる味わいを追求してきました。
目指しているのは「淡麗旨口」。
すっきりとした飲み口の中に、純米酒ならではの米の旨みや甘みをバランスよく感じられる酒です。
新潟らしいきれいさを大切にしながら、米から生まれる味わいもしっかり楽しめる。
そこに雪椿酒造ならではの個性があります。
効率よりも、人の手と感覚を大切に
雪椿酒造では、昔から「手の届く造り」を大切にしています。
酒造りの工程を機械任せにするのではなく、造り手が自分の目で見て、手で触れ、状態を確かめながら調整していく酒造りです。
たとえば洗米は、一度に大量の米を処理するのではなく10kgずつ手洗いし、米が水を吸う時間を細かく管理します。
蒸米では米を少量ずつ重ねていく「抜掛け法」を用い、麹造りにも小さな麹箱を使用。
手間はかかります。
しかし、小さな単位だからこそ、米や麹の状態に合わせて人の手で細かく調整することができます。
効率だけではなく、「より良い酒を造るために人が手をかける」。
その姿勢が雪椿酒造の酒造りを支えています。
酒造りを支える「和醸良酒」
雪椿酒造が酒造りのモットーとしているのが「和醸良酒」です。
良い酒を造るためには、技術だけでなく、酒造りに携わる人たちの連携も欠かせません。
洗米、蒸米、麹造り、仕込み。
一つひとつの工程を人の手で丁寧につないでいくからこそ、蔵人同士のコミュニケーションも重要になります。
適度な緊張感を持ちながら、お互いに連携して酒を醸す。
「和」を大切にする蔵の空気も、一杯の酒を支える大切な要素です。
加茂山の花から生まれた「雪椿酵母」
雪椿酒造には、もうひとつ興味深い物語があります。
蔵の裏手にある加茂山公園には、ユキツバキが群生しています。
「酒蔵の名にも、酒の名にもなっているユキツバキから日本酒を造れないだろうか」。
そんな発想から、2005年にユキツバキの花を東京農業大学へ送り、清酒造りに適した酵母を探す取り組みが始まりました。
花から酒造りに適した酵母を見つけ、実際に醸造へ使用するまでには時間がかかります。
研究を重ね、約3年を経て実用化されたのが、オリジナルの「雪椿酵母」です。
この酵母を使用した酒は、しっかりとした酸味とキレのよい味わいが特徴。
加茂の地に咲く花から生まれた酵母で、加茂の酒を醸す。
雪椿酒造と地域とのつながりを感じられる、個性的な酒造りです。
伝統を守りながら、雪椿にしか造れない酒へ
200年以上の歴史がありながら、「昔からこうしてきた」というだけで酒を造らない。
全量純米への転換や、雪椿酵母への挑戦からも、雪椿酒造の姿勢が伝わってきます。
昔ながらの手仕事を大切にする一方で、自分たちにしか造れない酒を求めて新しいことにも挑戦する。
そして、米の旨みを生かしながら、すっきりと楽しめる「淡麗旨口」を目指す。
伝統と挑戦の両方が、「越乃雪椿」の味わいへとつながっています。
雪椿酒造の代表銘柄「越乃雪椿」
雪椿酒造の代表銘柄が「越乃雪椿」です。
なかでも「越乃雪椿 純米吟醸 花」は、蔵を代表する人気の一本。
きめ細やかな旨みと華やかな香りを楽しめる純米吟醸です。
また、加茂山のユキツバキから見つけたオリジナル酵母を使用した「越乃雪椿 純米吟醸 雪椿酵母仕込」も、ぜひ注目したい一本。
さらに、山田錦を40%まで磨いて醸す「越乃雪椿 純米大吟醸 月の玉響」など、純米酒にこだわる蔵だからこその多彩な味わいを楽しめます。
一杯の「越乃雪椿」に込められたもの
200年以上受け継がれてきた酒造り。
人の手と感覚を大切にする丁寧な仕込み。
全量純米への挑戦。
そして、地元に咲くユキツバキから生まれた独自の酵母。
雪椿酒造の日本酒には、加茂という土地と、そこで酒を醸す人々の物語が詰まっています。
新潟らしいすっきりとした飲み口を楽しみながら、米の旨みもしっかり味わいたい。
そんな方に、ぜひ一度味わっていただきたい酒蔵です。


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