新潟県南魚沼市。
冬になると深い雪に包まれる八海山の麓で、日本酒「八海山」を醸しているのが八海醸造です。
創業は1922年。
日本有数の米どころとして知られる魚沼の自然に寄り添いながら、米、水、麹、そして発酵と向き合い、酒造りを続けてきました。
「八海山」と聞くと、すっきりとした新潟らしい酒を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、その味わいを支えているのは、ただ淡麗さを求めるだけではない、米の旨みを引き出すための細やかな酒造りです。
1922年創業。八海山の麓で始まった酒造り
八海醸造が創業したのは1922年。
酒蔵がある南魚沼は、山々に囲まれ、冬には多くの雪が降り積もる雪国です。
八海醸造は、この地域の自然環境を酒造りの背景として大切にしながら、「八海山」を育ててきました。
長い歴史だけに頼るのではなく、より良い酒を造るために必要であれば設備や技術も取り入れる。
一方で、酒造りの最後の判断を人の感覚に委ねる部分も大切にする。
八海醸造には、伝統か機械化かという二者択一ではなく、「おいしい酒を造るために何が必要か」を考える姿勢があります。
八海山の味を支える「麹造り」
日本酒造りの中でも、八海醸造が特に力を注いでいる工程のひとつが麹造りです。
米のでんぷんを糖へと変え、日本酒の発酵を支える麹。
八海醸造では、この麹造りに多くの労力をかけています。
設備によって効率化できる部分は効率化しながら、米の状態を見極め、必要なところには人が手を入れる。
機械に任せれば同じ酒ができるわけではありません。
その年の米の硬さや水分量など、原料の状態は毎年変わります。
数字と設備を活用しながら、最後は造り手が米の状態を見て調整する。
その積み重ねが、八海山の安定した酒質につながっています。
一種類ではなく、さまざまな米を使いこなす
八海醸造の酒造りで興味深いのが、酒質に合わせて複数の品種の米を使い分けていることです。
五百万石をはじめ、美山錦、山田錦、越淡麗などの酒造好適米。
さらに、トドロキ早生、こしいぶき、ゆきの精といった米も酒造りに生かしています。
「高級な酒米だけを使えば、おいしい酒になる」という単純な考え方ではありません。
目指す味わいに合わせて、それぞれの米が持つ特徴を組み合わせる。
すっきりとした飲み口の中にも米の旨みを感じられるように、原料を使いこなしていきます。
そこには、長年酒を醸してきた経験と技術があります。
「淡麗」だけでは終わらない八海山
新潟の日本酒を表す言葉として、よく知られているのが「淡麗」です。
八海山にも、すっきりとした口当たりや飲みやすさがあります。
しかし八海醸造が求めているのは、単に軽く、きれいなだけの酒ではありません。
新潟の軟らかな水が生み出す、なめらかな飲み口。
そこに米から生まれる旨みやふくらみを加え、料理と一緒に飲み続けられる酒へ仕上げていく。
派手さを競うのではなく、食卓に自然となじみ、もう一杯飲みたくなる。
八海山が長く親しまれている理由のひとつは、そんな食中酒としての魅力にあります。
機械と人、それぞれの良さを生かす
八海醸造の蔵内では、酒造りのさまざまな工程に設備が導入されています。
しかし、機械化そのものが目的ではありません。
大切なのは、おいしい酒を安定して造ること。
洗米や浸漬でも、米の品種やその年の状態を考えながら条件を設定し、必要に応じて人が微調整します。
同じ品種の米でも、毎年まったく同じ状態ではありません。
だからこそ、設備の正確さと、人の経験による判断の両方が必要になります。
新しい技術を使いながら、人にしかできない仕事も大切にする。
八海醸造の酒造りを支えている考え方です。
雪国の知恵を酒造りへ。「雪室」でゆっくり熟成
南魚沼らしさを象徴する取り組みのひとつが「雪室」です。
冬には大量の雪が降る南魚沼。
かつて雪は暮らしを難しくする存在でもありましたが、雪国ではその雪を利用して食べ物を保存する知恵も育まれてきました。
八海醸造では、この雪国の伝統的な知恵を日本酒の熟成にも生かしています。
雪を利用することで、庫内は年間を通じて低温に保たれます。
急激な温度変化を避けながら、酒をゆっくりと寝かせていく。
自然の力を生かした雪室は、南魚沼という土地だからこそ生まれた酒造りのひとつです。
日本酒から地域の魅力へ。「魚沼の里」
八海醸造の取り組みは、酒蔵の中だけにとどまりません。
八海山の麓には「魚沼の里」があります。
豊かな緑の中に、ショップや飲食店などが点在し、日本酒だけでなく、魚沼の食や文化、自然に触れられる場所です。
酒を造って販売するだけではなく、「この酒が生まれる土地そのものを知ってもらいたい」。
日本酒を入り口に南魚沼へ足を運び、地域の魅力を感じてもらう。
八海醸造の酒造りには、地域とともに歩んでいこうとする姿勢も表れています。
米、麹、発酵から広がる八海醸造のものづくり
八海醸造が向き合っているのは、日本酒だけではありません。
日本酒造りの根本にある「米」「麹」「発酵」という日本の食文化に目を向け、その可能性を広げています。
長年培ってきた発酵の技術や知識を生かしながら、新しい分野にも取り組む。
それでも中心にあるのは、日常の中で「おいしい」と感じてもらえる酒を造り続けることです。
時代に合わせて変化しながらも、毎日の食卓に寄り添う酒を大切にする。
そこに八海醸造らしさがあります。
八海醸造の代表銘柄「八海山」
八海醸造を代表する銘柄が「八海山」です。
なかでも「特別本醸造 八海山」は、長く親しまれてきた代表的な一本。
すっきりとした飲み口の中に、ふくらみのある味わいを感じられ、料理とともに楽しみやすい日本酒です。
また、南魚沼の雪を利用した雪室で時間をかけて熟成させる「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」など、この土地の自然を生かした酒も造られています。
普段の食卓で楽しむ酒から、特別な日に選びたい一本まで。
幅広い日本酒を造りながら、その根底には「食事とともに楽しめる酒」という八海山らしい魅力があります。
南魚沼の風土を一杯の「八海山」に
米どころ魚沼の米。
雪国の豊かな自然。
酒造りの要となる麹。
長年積み重ねてきた発酵の技術。
そして、最後に酒の状態を見極める造り手の経験。
さまざまな要素が重なって、「八海山」の味わいは生まれます。
華やかさだけを楽しむのではなく、料理と一緒にゆっくり杯を重ねたい。
そんなときに選びたくなるのが八海山です。
一杯を味わうとき、その酒が生まれた八海山の麓と南魚沼の雪景色にも、少し思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。


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