新潟県南魚沼市。
日本有数の豪雪地帯であり、米どころとしても名高い魚沼の地で、300年以上にわたり酒造りを続けているのが「青木酒造」です。
創業は1717年。
代表銘柄は「鶴齢(かくれい)」。
すっきりとした新潟酒らしい飲み口の中に、米の旨みを感じさせる「淡麗旨口」の酒を醸しています。
青木酒造の酒造りを支えているのは、南魚沼に降り積もる深い雪、そこから生まれる水、米、受け継がれてきた技、そして地域の人々とのつながりです。
厳しい雪国の自然を受け入れるだけではなく、その恵みを酒造りへと生かす。
一杯の「鶴齢」には、そんな南魚沼の風土が息づいています。
1717年創業。南魚沼で300年以上続く酒造り
青木酒造の歴史が始まったのは、江戸時代中期の1717年。
2017年には創業300周年を迎えました。
酒蔵がある南魚沼は、冬になれば大量の雪が降り積もる雪国です。
現代のような除雪設備も物流網もなかった時代から、この土地で酒を造り続けてきました。
長い歴史を持つ酒蔵ですが、昔の方法をそのまま守ることだけを大切にしているわけではありません。
越後杜氏から受け継いできた技を大切にしながら、品質を安定させるための設備も取り入れる。
伝統と現代の技術を組み合わせながら、青木酒造らしい酒を追求しています。
「鶴齢」の名に残る鈴木牧之とのつながり
青木酒造の代表銘柄「鶴齢」。
この名前を付けたのは、江戸時代の随筆家・鈴木牧之です。
鈴木牧之は、雪国・魚沼の暮らしを記した『北越雪譜』で知られる人物。
青木家とは親戚関係にあり、現在の「鶴齢」という酒名にも深く関わっています。
『北越雪譜』には、美しい雪景色だけではなく、雪国で暮らす人々の苦労や知恵、雪を利用した生活文化なども記されています。
その世界は、現在の青木酒造の酒造りにもどこか重なります。
厳しい雪を避けるのではなく、その雪とともに暮らし、恵みとして生かす。
「鶴齢」という酒には、魚沼の雪国文化との深いつながりがあります。
南魚沼の雪が、米と水を育てる
雪国で暮らす人にとって、雪は美しいだけの存在ではありません。
毎日の雪かきや交通への影響など、ときには暮らしを脅かすほど厳しい自然でもあります。
しかし、日本酒造りという視点から見ると、この雪はかけがえのない恵みになります。
春になれば山々に積もった雪がゆっくりと解け、田園を潤します。
その水が魚沼の米を育て、さらに地中へ染み込み、酒造りに欠かせない水へとつながっていきます。
米も、水も、その源をたどれば南魚沼の雪に行き着く。
青木酒造にとって雪は、酒造りと切り離すことのできない存在です。
雪を天然の冷蔵庫に。「雪室」という知恵
青木酒造では、南魚沼に大量に降る雪を日本酒の貯蔵にも活用しています。
その施設が「雪室」です。
雪の冷気を利用することで、庫内を低温で安定した環境に保ちます。
電気による一般的な冷蔵設備とは異なり、雪の冷気を生かすため、温度変化が非常に少ないのが特徴です。
青木酒造では、酒の種類に応じて温度の異なる貯蔵環境を設け、すべて瓶の状態で保管しています。
雪国では、昔から雪を利用して食べ物などを保存する知恵がありました。
その暮らしの知恵を、現代の日本酒造りへ。
雪を厄介なものとして終わらせず、地域にある天然のエネルギーとして活用しています。
「鶴齢」が目指す淡麗旨口
新潟の日本酒と聞くと「淡麗辛口」を思い浮かべる方も多いでしょう。
青木酒造の「鶴齢」は、その中でも「淡麗旨口」を大切にしています。
すっきりとした飲み口を持ちながら、米から生まれる旨みも感じられる酒。
食事の邪魔をせず、それでいて酒そのものにも味わいがある。
そんなバランスを追求しています。
南魚沼は、米どころとして全国的にも知られる地域。
その土地で酒を造るからこそ、米の持つ魅力を一杯の中にどう表現するかを大切にしています。
酒米や精米歩合によって広がる「鶴齢」の個性
青木酒造の面白さのひとつが、同じ「鶴齢」という銘柄でも、使用する酒米や精米歩合の違いを楽しめることです。
米が変われば、酒の香りや旨み、口当たりにも違いが生まれます。
磨き方が変われば、同じ米でも表情が変わります。
「日本酒は難しい」と考えるのではなく、同じ蔵の酒を飲み比べながら違いを探してみる。
そんな楽しみ方ができるのも、鶴齢の魅力です。
一杯ずつ比べてみると、酒米や造りの違いがより身近に感じられるでしょう。
酒造りを支える「和合」の精神
青木酒造が社訓として大切にしている言葉が「和合」です。
良い酒は、酒蔵だけで造れるものではありません。
米を育てる人。
酒を造る人。
商品を届ける酒販店や飲食店。
そして、酒を飲む人。
それぞれがつながり、信頼関係を築くことで、酒は長く愛されていきます。
青木酒造では「造り手・売り手・飲み手」の三つの和が重なったときにこそ良い酒が生まれると考えています。
300年以上酒造りを続けてこられた背景には、地域や酒に関わる人々とのつながりを大切にしてきた歴史があります。
地域とともに歩む酒蔵
青木酒造にとって、南魚沼は単なる酒の生産地ではありません。
300年以上酒造りを続けられたのは、地域があったからこそ。
そんな考えから、地元へのさまざまな取り組みも続けています。
その姿勢がよく表れている酒のひとつが「雪男」です。
ラベルに描かれているのは、『北越雪譜』に登場する異獣。
山中で人を助けたという物語にちなみ、「雪男」の売上の一部は山岳救助活動への寄付に充てられています。
酒を販売することが、地域を守る活動にもつながる。
「雪男」は、青木酒造と南魚沼の関係を感じられる一本でもあります。
青木酒造を代表する「鶴齢」
青木酒造には、南魚沼の風土と酒造りへの考え方を感じられる日本酒があります。
「鶴齢 純米吟醸」は、新潟県の酒米「越淡麗」を使用し、55%まで精米して醸す一本。
炊きたての米を思わせるような穏やかな香りと旨みを大切にしながら、軽やかで上品な味わいに仕上げられています。
「鶴齢 純米大吟醸」は、新潟県産の越淡麗を100%使用。
華やかな香りとやわらかな口当たり、米の優しい旨みを楽しめます。
そして「雪男 本醸造」は、米の旨みを感じながら、後味はキリッと引き締まった辛口。
同じ青木酒造の酒でも、それぞれ異なる表情があります。
料理や飲む場面に合わせながら、自分に合った一本を探してみるのもおすすめです。
南魚沼の雪と人が醸す一杯
1717年から続く酒造り。
魚沼の米を育てる雪解け水。
酒を静かに守る雪室。
越後杜氏から受け継いできた技。
そして、造り手、売り手、飲み手をつなぐ「和合」の精神。
青木酒造の酒造りには、南魚沼という土地との深いつながりがあります。
厳しい雪国だからこそ生まれる恵みを、一杯の酒へ。
「鶴齢」を味わうときには、酒の向こうに広がる南魚沼の雪景色や田園風景にも、少し思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

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